【フリーランスとして生きる1】千葉悦子さん

フリーランスとして働いている方にリレー形式でエッセーを執筆いただきました。第1回はフリーランスとして活躍中の千葉悦子さんです。

介護がきっかけだった

完全な在宅ワーカーになって、5年目を迎えます。
父親が脳梗塞で倒れて施設に入所し、当時すでに認知が危うくなってきていた母親をひとりで家に置けなくなったのが、フリーランスとなるきっかけでした。クラウドソーシング自体は2012年から始めていたので、専業にすれば何とかいけるだろうという目算はありました。

始めた当時は正社員でしたが、東京から帰郷した直後であまりの給料の格差に困惑していたときに、クラウドソーシングサービスをインターネットのニュースで知りました。面白い働き方だと直感したのを覚えています。今後はそうしたワークスタイルが増えていくだろうと想像できたので、早めに開始しておけば歳を取ったとき年金の足しになるしスキルがつくかもしれないと、お小遣い稼ぎの感覚でした。

個人的な営業をせずに仕事が受注できるシステムを、革新的だと感じたのを覚えています。過去に企業のメルマガ発行やフリーペーパーの記事執筆を請け負った経験があったので、自然にライティングの仕事を選択していました。

今月と来月が同じとは限らない

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現在ではクライアントがほぼ固定されており、自分から応募することはほとんどありません。今改めて考えてみて、フリーランスが割の良い仕事かというと、決してそうは言えないと思っています。会社員のように傷病保障がなく、何かあればすぐに行き詰ってしまいます。仕事を受注できても、やり方を教えてくれる人はいません。あとにも先にも個人の能力次第なのです。

今月うまくいったからといって、来月も同様であるという根拠はまったくありません。スケジュール管理、案件の調整、経理まですべてが自己責任です。ただ時間の使い方や仕事を選ぶ自由があり、マネジメントをうまくこなせればまったくのゼロスタートからでも、会社員以上に稼ぐことも可能です。

クラウドソーシングはエリアに左右されない

特に地方の場合、クラウドソーシングの単価はエリアに左右されないため、収入においては有利だと言えます。私の場合は、フリーランスになって1年経つ頃には、帰郷後に働いていた会社の給料を楽に超えていました。

フリーランスになる場合には最初は副業で開始し、ある程度の実績を得て、将来的な予測ができてから本格化する、という段階的な方法が良いと思います。フリーランスのメリットとして、会社に就職するのとは違い、学歴や経験などに左右されないことがあります。また、自分で設定した目標金額を頑張り次第で上げられるところも、会社勤めでは感じられない醍醐味です。

自分をマネジメントする

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一方で生活面を含めたマネジメントや、抱える案件についての見極めはとても大変です。最近、ひとつの教訓になる例がありました。

比較的高単価の案件の依頼があったのですが、納期が短い上に1万字というボリュームの記事でした。自分は初めてということもあったので2本だけ受注しましたが、相当数請け負われた方がいたようです。ところが納品日になってもその方は1本も仕上がっておらず、結局〆切を遅らせた上、本数についてもギブアップしてしまったようでした。

クラウドソーシングのフリーランスであっても、基本的には人間同士の信頼関係が重要であるのに変わりはありません。例えクライアントと顔を合わせなくても、関係性ができれば良い仕事につながります。信頼を作り上げるも失ってしまうも、仕事の仕上げ方ひとつです。

ある程度の収入を得るためには、いくつもの案件を抱える必要があります。それぞれの締め切りを管理しながら、日々作業をためないようにする。それが自分のスタイルだと思っています。

フリーランスは一にも二にも自己管理です。業務の管理はもちろん、健康管理、生活管理ができなければ、すべてがうまくいかなくなります。自分のような在宅ワーカーは気楽なようですが、非常に孤独です。何があろうと、例え仕事がすべて打ち切られようとも、誰にも泣き言は言えません。

そんな中でも仕事を続けてこられたのは、かなり楽天的な性格によるものだと思います。それでも、自分の中で仕事に対してのルールを決め、無理なく、しかし受けた仕事は確実に遂行することを心がけてきました。

信頼と実績は一番の武器

フリーランスにとって、信用を失うのは致命的です。

信頼と実績がフリーランスの何よりの武器だと思っています。

フリーランスという働き方は、合う人、合わない人がはっきりと分かれるような気がします。自己管理ができて、請け負った仕事に対しては厳しいほどの責任感をもてる人であれば成功できると思います。また、少しレベルの高い仕事にも前向きにチャレンジできるタイプの人が、収入を積み上げていけるのではないでしょうか。

いずれにしてもフリーで働く人には、自分の能力を信じていくことが求められます。

フリーランスにもさまざまな形がありますが、自分がやっているような在宅ワーカーならば、どんな人でも始めることは可能です。ただ、それを本業としていけるかどうかは、その人の覚悟次第です。今でも時々、フリーランスで生活している自分に驚き、大きな不安に襲われることもあります。しかし、「きっと大丈夫。ダメならばまたゼロから始められるから」と気楽に構えるようにしています。

生涯現役のフリーランスで生きる

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昨年、フリーランス協会が提供している収入保障保険に加入しました。守ってくれるものがないのであれば、自分で準備をするだけです。自分に対してのさまざまな負荷が楽しめるようになると、フリーランス人生も悪くないと思えるようになるのかもしれません。

私の場合は介護離職という、割と良くあるパターンでフリーランスになりましたが、今の生活がとても気に入っています。今は、生涯現役のフリーランスであり続けたいと願っています。

(文 千葉悦子)

企業向けweb企画・制作・サーバー管理経験多数。ホスティングサービス利用、ドメイン取得などの業務を請け負う。主な使用は「さくらのレンタルサーバー」「ロリポップ!レンタルサーバー」など。パソコン講師、PCサポート、経済データベースインストラクターなど多様な業種を経て、現在は在宅ワーカーとしてライター業・セミナー業に従事。
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