【フリーランスとして生きる15】ライター まりも

フリーランスとして活動している方にリレー形式でエッセーを執筆いただいています。第15回はフリーランスとして活躍中のまりもさんです。

気がついたらフリーランスをやっていた

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これまでフリーランスになりたいと思ったこともなければ、フリーランスになってやるぞと決意を決めたこともありません。しかし私は今、フリーランスとして生きています。

気がついたらフリーランスになっていた、という言葉以外にぴったりなものはおそらくないでしょう。

もともとは都内のドラッグストアで働く薬剤師でした。お昼前に家を出て日付が変わるころに帰宅。往復3時間の通勤、30~40分しか取れない休憩、サービス残業が美徳とされる風潮。

「あぁ、こんな毎日を送って私は年老いていくのかぁ…」

そんなことを思いながら毎日のように満員電車で押しつぶされ、職場でも身を削りながら生きていました。社会人になって4年目の年、関東を離れて地元の九州に戻ることを決意します。もうこの生活を続けるのは限界だと思ったのです。

普通ならここで多くの人は転職活動をするのでしょう。しかし私はしばらく正社員にはなりたくない、休憩したいという思いが強かったので次の仕事を見つけないまま退職しました。

仕事を辞めても生きていける気がなんとなくしていた

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転職先を見つけないまま仕事を辞めることについて、少しも不安はありません。なんとなく「どうにかなるだろう」という気持ちが心のどこかにあったのです。

むしろ「やっと人生を仕事に奪われなくて済む」という喜びのほうが当時は大きかったように思います。

というのも、仕事を辞める半年前くらいから実はクラウドソーシングを使っていくらか報酬を貰っていたんです。片手間でやっていたお小遣い稼ぎを本気でやれば、最低限の生活費くらいにはなるだろうと見込んでいました。

たとえ数千円、数万円でも収入がゼロにはならないという安心感があったのです。

・仕事を辞めたのに転職先を見つけていなかったこと
・クラウドソーシングを使っていたこと

この2つが決め手となって、私は知らない間にフリーランスへの道を歩みはじめていました。

なぜライターになったのか

フリーランスと言ってもデザイナーやプログラマー、動画編集などさまざまな仕事がある中で私はライターをやっています。

文章のうまい下手は置いといて、とりあえず何かは書ける。キーボードを押すことで画面に現われる文字に値段がついていく。特殊なスキルも道具もいらないのにお金を稼げることに魅力を感じてライターを選びました。

もともとお小遣い稼ぎでクラウドソーシングを使っていたときも、「◯◯の感想」とか「◯◯体験談」みたいなのばかりやっていたので、自然と文字を書くお仕事に気持ちが向いていたのでしょう。

それにライターは場所を選ばずにどこでも仕事ができることも魅力です。最悪スマートフォンさえあれば病院の待ち時間や電車の中などでもお仕事を進められます。

わざわざ着替えてお化粧をして時間をかけて通勤しなくても、今いる場所を職場にできるのは私にとって文句の付けどころがない働き方でした。

ライターになったものの収入はガタ落ち

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実はライターを始めた当初、ずっとライターとして生活していくとは少しも思っていませんでした。仕事を辞めて1年くらいはゆっくりしたいなと思っていたので、ライター業はその間のつなぎという位置づけです。

それなのに今は、しっかりとライターとして生きていく道を進んでいます。売上が発生するかどうかがすべて自分の行動次第という責任感はありますが、自分の人生を仕事にどんどん奪われていく感覚が今の生き方にはありません。

だから正社員にはもう戻れなくなってしまったのです。正確には、正社員に戻りたくないと言ったほうが正しいかもしれません。

しかし、何の計画もなしにフリーランスになった私が、最初から上手くいくはずはありません。

時給換算500円にもならない仕事、納品したのにお金を払ってもらえない、突然20万円分のお仕事が失注…。「今月も家計は赤字だな」という日々が1年ほど続きました。

ずば抜けて文章が上手なわけでもないし、才能があるわけでもないのでスタートダッシュが悪いのは当たり前のことです。とはいえ正社員のときと比べると年収が一気に減ったという事実は、嫌でも私に「正社員に戻る」という選択肢をチラつかせます。

それでも私はフリーランスを続ける

「薬剤師をやめるなんてもったいない」

仕事を辞めるとなったとき、こんな言葉を数え切れないくらいの人から投げかけられました。私にはこの「もったいない」の意味が今でもわかりません。資格を使わないからもったいないのでしょうか。

苦労して取った資格であることは間違いありませんが、私にとって本当にもったいないのは「仕事だけで人生が終わってしまうような生き方をすること」です。

もちろん人によって考え方や捉え方は違うので、私の考えを誰かに押し付けようとは少しも思っていません。

フリーランスであれば仕事の量も時間も場所も、ある程度は調整できます。何かスキルを身につければそれが売上へとつながっていきます。収入を伸ばせれば稼働日を極力少なくして趣味に没頭するような生活もできるでしょう。

正社員のように決まったお給料が支給され、有給休暇が与えられ来月どころか来年の給料まで約束してもらえる。フリーランスにはない良さが正社員にはたくさんあります。

それでも私は自分の人生を自分らしく生きるために、これからもフリーランスをやっていくでしょう。ただしフリーランスにしかない茨がそこらじゅうの道にあることは間違いありません。来月のお仕事があるかなんて、誰にもわかりません。

だけど茨の道を突き進んだからこそ得られる何かがあるはず。得られるものが自由なのかお金なのか、それともただの自己満足なのかはわかりません。ただ、数年後、数十年後に「この仕事を選んで良かった」と思えるような生き方をこれから作り上げていきたいと思っています。

文・まりも

まりも

資格にとらわれない生き方を実現する熊本在住のフリーライター。自分の人生を自分らしく生きることを目標にしています。執筆は医療系から美容、日常に関することまで幅広く受注中。これからも生きていけるフリーランスであるために、デザインや動画編集のスキルなども日々学んでいます。

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